『籠の中のアリシス』
鷹村コージ書き下ろしSS
[extracurricular lesson]




そう話しながら、ダレンさんがそっと私の肩に手を置いてくる。
そして自分の胸元へと引き寄せようと動かす。
私が慌てて離れようとする前に、その手をハーヴェイが払いのけてくれた。

「こら。不用意に瑠奈に触れるな。ホントお前は馴れ馴れしいな」
「……なんですか。羨ましいならあなたもやればいいじゃないですか」
「羨ましいわけじゃねぇよ! アホか! 真面目に教育をしろ!」
「はいはい、分かりましたよ」

ハーヴェイとダレンさんがちょっとした言い争いみたいな感じで会話をする。
それを聞いているだけで、私の口元には自然と笑みが浮かんだ。

(なんだかんだ言って、二人とも仲がいいんだよね)

それから、ダレンさんは、スキンシップを何度も入れながら(そしてハーヴェイに阻止されていた)本を読んでくれる。
ダレンさんが終わったら、次はハーヴェイ。
次々と聞かせてくれているルーチェの世界の歴史は知らないことばかりで、とても興味深いし、何だかわくわくする。
だけど、空から注ぐ暖かな陽気に、自然と私の瞼は徐々に重みを増していった。

(……うう、眠い……。だ、駄目駄目! ハーヴェイとダレンさんがわざわざ本を読んで教えてくれているのに、寝ちゃうなんてよくないよ。でも……この陽気と……二人の声が凄く気持ちよく聞こえてきて……まるで子守唄を歌われてるみたい……)

私はハーヴェイの声を聞きながら、ゆっくりと自分の意識が眠りの中へと沈んでいくのを、止められなかった。


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