『籠の中のアリシス』
鷹村コージ書き下ろしSS
[extracurricular lesson]




ハーヴェイは眉間に皺をよせて、少しの間、悩んでいたけれど、ふっと表情から力を抜く。
そして、眉をさげて笑った。

「まぁ、確かにダレンの言う通りだな。ったく、仕方ねぇか。瑠奈、ダレンと一緒で構わないか?」
「あ、はい。二人がいいなら、私はぜんぜん大丈夫です」

その返事に満足そうに微笑むダレンさんは自分の隣のスペースを、ぽんぽんと手で叩く。

「さ、瑠奈。俺の隣へどうぞ?」
「俺の隣でもあるだろ。ったく、現金な奴だな」

ハーヴェイは文句を言いながら、噴水のふちへ腰かける。
ちょうど、ダレンさんとの間に一人分のスペースを空けて。

(これってつまり、ハーヴェイとダレンさんの間に座れってことだよね)

「瑠奈。ダレンのアホの戯言は気にしなくていい。楽にしていいぞ」
「誰がアホですか。失礼な」
「あ、えっと、それじゃ、座りますね」

私は、ハーヴェイの言葉に誘われて、その空いたスペースに腰を下ろした。
左隣にハーヴェイ、右隣にダレンさんがいる。
なんだか、緊張しちゃうな。

「それじゃさっそく心の教育といくか。俺とダレンが本を読んで聞かせるから、ちゃんと聞いてろよ」
「あ、はい!」

ハーヴェイは来る途中で図書室によって持ってきた本を自分の脇へどさどさと置く。
そして一冊の本を手にして、ダレンさんへ渡した。

「ほら、お前の分」
「了解しました。ではまずは私から読んでさしあげますね。あ、瑠奈。もし聞こえづらかったりしたら、俺のほうへ身体を寄せてもいいですから。大丈夫。あなたの重みなどまるで鳥の羽のような軽さです。まったく気になりません。だから安心して、寄りかかってきてくださいね」


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