『籠の中のアリシス』
鷹村コージ書き下ろしSS
[extracurricular lesson]
「おや? 瑠奈にハーヴェイじゃないですか」
中庭の噴水のふちに腰かけて、読書をしていたダレンさんがそう柔らかな笑みを浮かべて、声をかけてきてくれた。
「もしかして、心の教育ですか」
「そうだよ。邪魔だからどっか別の場所で本読んでろ、ダレン」
「随分な言い草ですね。別に俺がいても問題ないでしょう?」
「お前が身動き一つせず、ひたすら本の文字を目で追ってるなら、いても構わねぇけどな」
「冗談でしょう? そんなことをしていたら、瑠奈の可愛い顔が見られないじゃないですか。側にいるのに触れられないなんて、それは拷問です。ねぇ、瑠奈?」
ダレンさんが私へと手を差し伸べてこようとする。
だけどそれを、べしっ! とハーヴェイが思いっきり叩き落とした。
「そういうのが邪魔だっつってんだよ!」
「ケチくさいですね。まあ冗談はさておき、どうせ心の教育をするなら、俺とハーヴェイで同時に行いませんか?
彼女の魂を穢しているノワールを俺達の力で浄化出来る──願ってもないことでしょう?」
にっこりと微笑むダレンさんを前に、ハーヴェイが難しい顔をした。
(魂を穢す、ノワール……かぁ)
心の教育は、ロアクリストと会話しているだけでもいいらしい。
私が、この世界の救世主である存在『アリシス』になるためには、私の魂にしみこんでいるノワールを浄化しなければ、なれない。
そしてその方法は、神様から特別な力を与えられているロアクリストと魂を触れ合わせる、つまり心を通わせればいいって、前に教えてもらった。
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