『Bloody Call』
長野和泉書き下ろしSS企画
『ある日の彼ら』
第六回:ジン
[ジンのとある一日。]
その言葉に、我は足を止めて少年の方を振り返る。
「例の娘……だと?」
その反応を目にして、エン=ソフは「ふふっ」と笑ってみせた。
「やっぱり、ボスも気になってたんだ。いいよ、じゃあ特別に見せてあげる」
まるで宝物を披露するように得意げな口振りで言った後、一枚の書類と写真を差し出す。
「この小娘が、フライコールの?」
問う声が、ひとりでに疑念を含んでしまう。
写真の娘の年の頃は、16、7といったところだろうか。ごく普通の女子高生といった風情だ。
この娘が、このグラズヘイムを二分する組織のボスだとは、どうしても思えない。
エン=ソフは机に軽く腰を下ろし、足をぶらぶらさせながら答える。
「そうみたいだね。ボクは、結構綺麗なお姉ちゃんだと思うんだけど……ボスはどう思う? こういうお姉ちゃん、好き?」
少年は我の顔を覗き込みながら、揶揄を含んだ質問を向けてくる。
我は無言で、目をそらした。この少年の戯れ言には、付き合っていられない。
そんなことよりも、問題は――。
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