『Bloody Call』
長野和泉書き下ろしSS企画
『ある日の彼ら』
第六回:ジン
[ジンのとある一日。]
「……この娘は、半綺ではないのだな」
そう、写真に写る彼女の虹彩は、真円の――人間のものだった。
エン=ソフはほつれひとつない銀髪をさらりと揺らしながら、声を低めて呟く。
「そうだよ。ハルが言ってた通り、半綺じゃないみたい。……どういう事なのかな?」
彼の疑問は、もっともだ。
この『NEDE』と同じく、『フライコール』も半綺だけで構成されているはず。ならば、半綺をボスに頂くのが当然のはずだ。それなのに、なぜ……?
「まあ、何事にも例外っていうのはあるものだし、気にしてもしょうがないのかな」
銀髪の少年はそう言いながら、ちらりとこちらを見やる。
だが我は無言のまま、写真を凝視し続けていた。
気に掛かることが、ひとつあった。
「どうしたの? 難しい顔しちゃって。何か、気になることでもあるの?」
どこで会ったのか、はっきりとは思い出せない。
ただ、物事を疑うことを知らぬかのようなこの瞳や表情には、見覚えがあった。恐らく、『NEDE』ができるもっと以前に――。
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