『Bloody Call』
長野和泉書き下ろしSS企画
『ある日の彼ら』

第五回:カイン
[カインのとある一日。]




陽気でオープンで、細かいことにこだわらない――彼女が信じている『カイン』という青年そのままの表情と態度で。
「ちょ、ちょっと――!!」
突然のことに驚いて、一瞬反応が遅れたものの、それでも深くハグされる直前にボクを突き飛ばす反応速度はなかなかのもの。
何とかボクの胸を押しのけながら、彼女は問いかけてくる。
「ど、どうしてカインがここにいるわけ? まだお店、開いてないんでしょ?」
「ハイ。雨に降られちゃって困ってたら、マスターがシャワーを貸してくれたんです」
「そうなんだ……」
そう答える双葉の声音に、寂しげな響きが含まれていた。
その反応に気付かないふりをして、質問を投げかける。
「双葉は、どうしてここに来ましたか? マスターに、何か用事ですか?」
「それは……」
双葉は当惑げな表情になり、言葉を濁す。
すると、それまで沈黙していたマスターが……。



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