『Bloody Call』
長野和泉書き下ろしSS企画
『ある日の彼ら』

第五回:カイン
[カインのとある一日。]





にしても本当、警戒心のない男だよね。
いくら常連だからって気軽に開店前の店に入れて、シャワールームを使わせるなんて。
彼がかつて何をしてたのかを考えたら、別人みたいな変わりようだよ。
きっと彼は、ボクがここに通ってる目的にも、気付いてないんだろうな。
人を疑うって考えを持ち合わせてないのかも。
……長い間、あの場所にいたとは思えないよね。
そんな取り留めもないことを考えながら、シャワールームを出た時だった。

「……今日は、どうしても聞かせていただきたいことがあって、来たんです。構いませんか?」
聞き覚えのある声が、ホールの方から聞こえてきた。
拭いかけの髪もそのままに、ボクは彼女の所へ走って行く。
そして――。
「Wao! ボクに会いに来てくれたんですね、Baby girl!! I’m glad! 嬉しいです!!」
言いながら、彼女――聖 双葉の細い身体を抱きしめようとする。



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