『Bloody Call』
長野和泉書き下ろしSS企画
『ある日の彼ら』
第四回:久神
[久神のとある一日。]
「……聖、君か」
この学校の二年生で、ある意味、学校で一番の有名人――聖 双葉が立っていた。
「はい! 先生、私の名前、覚えてくださってるんですね」
「ああ。……君は、有名人だからな」
私の言葉に、彼女は居心地悪そうに身をすくめた。
美形の転校生二人にかしずかれる生活というのは、傍から見るほど楽しいものでもないらしい。
しばらく彼女と肩を並べて歩いていたが、ふと、あることに気付いて、足を止める。
「……この匂いは?」
「えっ? 何か、匂いがしますか?」
「いや、不快な匂いというわけではないのだが……シトラスのような香りが……」
「シトラスって、柑橘系でしたっけ? だったら、アロマオイルの香りかも知れません」
「アロマ?」
「はい。グレープフルーツとか、柑橘の匂いは集中力を高めてくれるって聞いたので、勉強する時に焚くようにしてるんです。……少しでもはかどるといいなぁ、って思って」
「……なるほど。それで、効果のほどは?」
そう問うと、彼女は困ったような笑顔になる。
「あまり効果はないらしいな。まあ、気分転換ぐらいにはなるのだろうが」
「そうですね」
その後、軽く世間話をしたあと、私は保健室へ、彼女は自分の教室へと向かった。
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