『Bloody Call』
長野和泉書き下ろしSS企画
『ある日の彼ら』

第三回:渉
[渉のとある一日。]




 ……って、駄目だ駄目だ。
 まだ掃除終わってねーのに、そんなの観てる暇なんてねーはずじゃん。
 そう思って、畳の乾拭きを続けようとするが……どうしても、視界の端にあるテレビが気になってしまう。
 だ、大丈夫……かな?
 たった30分なんだし、観終わった後に急いで片付ければ何とかなるかも……。
 何より、このままだと掃除に集中できそうにねーし。
 よし、決めた!
 オレは周囲に人の気配がないことを確かめてから、おもむろにテレビの電源を入れる。
 スピーディーな展開に、血湧き肉躍るバトル。オレは数分も経たないうちに、テレビに釘付けになってしまう。
 そうだよな。やっぱ、これが男の世界ってもんだよな……!
 オレもいつかこんな風に、誰かを守って戦うことができたら、すっげー格好いいんだろうな……。
 そんなことを心の中で呟いた瞬間、なぜかふと、聖の顔が脳裏に浮かんだ。
 ……ちょ、ちょっと待て。
 どうして、「誰かを守る為に戦いたい」って思った瞬間、あいつの顔が浮かぶんだ?
 格好いい男ってのは、もっと――世界平和の為とか、この街で暮らす子供とか、そういうものの為に戦うもので……。
「い、いや、あり得ねーぞ。今のはきっと、何かの間違いだ! うん、そうに違いない!」
 そう呟きながら、頭をぶんぶんと左右に振った時。



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