『Bloody Call』
長野和泉書き下ろしSS企画
『ある日の彼ら』

第三回:渉
[渉のとある一日。]





「こ、のやろ……なかなか綺麗にならねーな……」
 床も窓も一応毎日磨いてはいるのだが、人の出入りが激しい為か、はたまたこの街の空気が汚れているからか、なかなか綺麗になってくれない。
 オレがこの秀真邸の居候になってから、もう数年になる。
 秀真機関の構成員でも何でもないオレをここに置いてくれて、メシや住むところの面倒を見てくれてる兄貴や秀真機関の人達には、いくら礼を言っても言い足りないくらいだ。
 だから、せめてもの恩返しに、こうして毎日屋敷の掃除をさせてもらってるってわけだ。
 まあ、できることが掃除ぐらいしかねーってのも正直、情けなくはあるけど……オレだってきっといつか、秀真機関の一員として立派に働ける日が来るはずだし。
 それに……無理して背伸びなんてしたら、またあの時みたいなことになっちまうに決まってるもんな。
 あの日のことを思い出すと、悔しさが胸に満ちてくる。
 オレは――『NEDE』の制服を着たあいつに、手も足も出なかった。笑えるぐらい、実力の差があり過ぎた。
 聖はいい奴だから、オレを責めたりしなかったけど……。
「……と、こんなこと考えてる暇なんてねーよな。さっさと、掃除終わらせちまわねーと」
 と、その時、何気なく時計を見上げたオレは、あることに気付く。
 そーいや今日は、いつも観てる戦隊ヒーローの放映日だっけ。



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