『Bloody Call』
長野和泉書き下ろしSS企画
『ある日の彼ら』

第一回:黎明
[黎明のとある一日。]




「お、おはようございます、双葉」
 必死に平静を装って朝の挨拶をすると、彼女は笑顔を返してくれる。
「うん、おはよう」
 そう言った後、不思議そうに目を見開き……。
「あれ? 朝ご飯、まだ準備中? 黎明にしては、珍しいね。よかったら、私も手伝おうか?」
「いえ、そういう訳では――。すぐに準備できますから、サロンの方へ行っていてください」
「ん、分かった」
 彼女はそう言いながら、サロンへと戻ろうとする。
 傍らに立っている司狼が、僕の肘をつつきながら、小声で尋ねてくる。
「……味付けの好み、訊いとかなくていいのか?」
 その気の回し方を癪に思わないでもなかったけど……彼の言う通り、本人に訊かなければ始まらないというのも、また事実で。
 僕は、サロンに戻ろうとする双葉を慌てて呼び止める。
「あの――ひとつ、お尋ねしたいことがあるのですが」
「えっ、何?」
 彼女は何の気なしに、こちらを振り返った。
「えっと、その……」



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