『Bloody Call』
長野和泉書き下ろしSS企画
『ある日の彼ら』

第一回:黎明
[黎明のとある一日。]





 早朝。
 いつものように、アラームが鳴る10分前に目を覚まして、台所へ向かう。
 廊下の窓からは雲ひとつない青空が見えた。今日も、いい天気になりそうだ。

 ポタージュを作る為、茹でた野菜を裏ごししようとして、ふと気付く。
 ……そういえば、2人分ではなく、3人分の朝食を用意しなければならないのだった。彼女がこの屋敷で暮らし始めて、そろそろ数週間になろうというのに、未だにこういった失敗をしてしまう。
 慌ててもう1個卵を追加し、味付けしようとしたところで――また手が止まる。
 何ということだろう。好き嫌いがあるかどうかを訊くのを、失念していた。
 急いで壁に掛けてある時計を振り返り、時刻を確かめる。
 ……彼女の起床予定時間には、まだ30分ほど早い。
 どうするべきか。塩加減を尋ねる為だけに起こすのも何だし、だからといって、口に合わない物を出してしまうというのも……。
 そんなことを考えつつ、ボウルを抱えたまま立ち往生していると――。



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